Mysterious Lover
「あ……」
きゅ……と、膝の上で手を重ねて、握り合わせた。
ちゃんと、言わなくちゃ……。
言うなら、今しかない。
わたしは、こくって小さく唾を飲み込んだ。
「工藤さん、わたし、この前からお話したいことがあるって言ってましたけど、それ、実は……」
すると小さく、工藤さんの口からため息がもれて。
その唇の端がわずかに上がった。
「……別れたいって?」
「え?」
「まあ、この話の流れからすれば、想像はつくよな」
「あ……あの、すみませんっ」
「謝ることはないさ。で? 亀井と付き合うのか?」
「ち、違います! 彼は全然、ほんとに関係ありません!」
「……それを俺に信じろと?」
工藤さんは苦笑して、ワインに口をつけた。
「……事実ですから」
「へぇ……じゃあ、今夜は帰さない、って言ったら?」