Mysterious Lover

え……
ビクッと体をこわばらせると、工藤さんの目に笑いがにじんだ。
「冗談だよ」

あ、冗談……。
よかった。

「でも、最後にもう1本だけ付き合ってくれるか? デザートにぴったりのロゼがあるんだ」

「はい」

「じゃあフルーツでも一緒に出そうか」
って工藤さんが立ちあがる。

「奈央、悪いけどワインセラーから1本、取ってきてくれるか? 左の一番上に入ってるロゼ、すぐわかる」

「はい」

椅子から立ち上がり、ダイニングを出た。

ワインのせいか、体の中に熱がくすぶってるみたい。

奥行きを感じさせる長い廊下、毛足の長いじゅうたんに足を取られて、ふら付きながら歩いていく。

酔っぱらっちゃったかな? 今日のペース、ちょっと速かったかも。
なんて少し後悔したけど、でも同時に、ホッとしてた。

ついに……言っちゃった。
言えて……よかった。
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