Mysterious Lover
かすかに、室内から音がしていた。
人の気配はしないのに。この音は……何?
どうしてかわからないけど……鼓膜をひっかくような、その小さな音がなぜか気になって。
わたしは青い光の中に、そっと体を滑り込ませた。
そこは窓のない6畳ほどの部屋だった。
デスクと椅子、本棚……。
本棚に並んでるのは、広告やマーケティング関係の本。
書斎みたいに使っている部屋なのかも。
目を惹くのは、片側の壁を上から下まで、ほとんど覆ってしまう巨大なエキゾチックなタペストリー……それから、一番奥、飾り棚に置かれた大きな水槽。
中には数匹の熱帯魚がゆったりと泳いでいて。
青い光の正体は、その水槽に設置されたライトだった。
「うわ……きれい……」
思わずつぶやいて、近づく。
コポコポコポコポ……
水槽の中に取り付けられた、たぶん濾過用の装置だと思う。
絶え間なく水泡を吐きだして、水音を響かせてる。
それから。
そこにつながったチューブが水上まで突き出ていて……
排水口部分、プラスチックに少し不具合があるのか、わずかに水が漏れてる。