Mysterious Lover
「まさか……」
まさか、工藤さんが?
工藤さんがストーカーだったっていうの?
拓巳じゃなくて?
わたしは「バカバカしい!」って首を振る。
理由がないじゃない。工藤さんが、そんなことする、理由がどこにも!
でも……
その音は、気のせいだと片づけてしまうには、あまりにも似すぎていて。
全力疾走の後のように、呼吸はあっという間に浅くなっていく。
わたしはそれをまぎらわせようと、何回も深く息を吸い、そして吐いた。
ただ、必死に。
それを繰り返す。
落ち着いて! 落ち着きなさい。
とにかく……本当のことを知らなくちゃ。
なんとか確かめる方法はない?
わたしは思い切って、デスクの引き出しを開けてみた。
仕事関係らしいノートと資料のファイルが何冊か。
あと、名刺入れと。
特に関係ありそうなものはない……。