Mysterious Lover
「勘違いしてるようですけど……わたしは、父の、大切な娘なんかじゃないですよ。だいたい、もう10年以上も会ってないし。わたしに何かあったって、あの人は痛くもかゆくも」
バカにしたように、ふん、と鼻を鳴らし、工藤さんは肩をすくめた。
「親の心子知らずとはこのことだな。ま……どこも似たようなものだが。俺も、まさか自分の息子に邪魔されるとは思ってもみなかったしな」
息をのむ。
この人の、祥子さんの、息子……?
つまりそれは。
「……拓巳の、ことですか」
工藤さんは「あぁ」と投げやりにうなずいた。
「一体どこで知ったんだか。いきなり現れたと思ったら、『奈央さんには手をださないでくれ』なんて頭下げて。ま、面白そうだから特別出演を許してやったけどな。俺のシナリオには絶対服従、っていう条件つきで」
ハッと……した。
「もしかして……あの夜工事現場で……」
「あぁ、いたよ」
「材木を倒したのも?」
「あぁ俺だ。なかなかタイミングが難しかったがな」
うまくやっただろう、と笑う。