Mysterious Lover
工藤さんは、あんまり気にしてないみたいで、いつも通りふるまってくれているけど、やっぱり気になるし。
これからこんな状態がずっと続いたら……どうしよう……
わたし、そんな図太い神経持ち合わせてないってば!
誰か、前の穏やかな生活を返してください……
はあああって、今日何度目かの大きなため息をついた。
さてと。
ええと……
今日は線路わきを避けて、中の道から帰ろう。
昨夜のことがあるから、ね。少し遠回りになるけど、仕方ない。
10時近い時間帯、住宅街に人影はなくて。
防音がしっかりしてるのか、家の中の声もまったく聞こえないし。
しんと静まり返ってる。
どの道を通っても、やっぱりそれなりに気味悪いものよね。
昨夜は気のせいだった、と思うものの、やっぱり呼吸がちょっと浅くなってしまう。
腕が鳥肌だつような感じがして、早足で道をたどる。
ようやく視界に見慣れたクリーム色の2階建てアパートが見えて、わたしはホッと緊張を解いた。
アパートの外階段に足を乗せた時。
リリリリリリ…………
まるで狙いすましたかのように鳴り始めたその音に、一気に全身がフリーズした。