Mysterious Lover

工藤さんは、あんまり気にしてないみたいで、いつも通りふるまってくれているけど、やっぱり気になるし。

これからこんな状態がずっと続いたら……どうしよう……
わたし、そんな図太い神経持ち合わせてないってば!

誰か、前の穏やかな生活を返してください……
はあああって、今日何度目かの大きなため息をついた。


さてと。

ええと……
今日は線路わきを避けて、中の道から帰ろう。
昨夜のことがあるから、ね。少し遠回りになるけど、仕方ない。

10時近い時間帯、住宅街に人影はなくて。
防音がしっかりしてるのか、家の中の声もまったく聞こえないし。
しんと静まり返ってる。
どの道を通っても、やっぱりそれなりに気味悪いものよね。

昨夜は気のせいだった、と思うものの、やっぱり呼吸がちょっと浅くなってしまう。
腕が鳥肌だつような感じがして、早足で道をたどる。

ようやく視界に見慣れたクリーム色の2階建てアパートが見えて、わたしはホッと緊張を解いた。

アパートの外階段に足を乗せた時。

リリリリリリ…………

まるで狙いすましたかのように鳴り始めたその音に、一気に全身がフリーズした。
< 27 / 302 >

この作品をシェア

pagetop