Mysterious Lover

罪滅ぼし……?

その言葉が、その言葉の意味が、脳に落ちてくるまで、しばらくかかった。
そして。

あぁ……
そうか……
拓巳が必死になってわたしのために動いてくれたのは……
わたしのことを守ってくれたのは……
わたしに対して、父親を奪ってしまったという、罪悪感を持っていたから。

罪滅ぼしのため。
そっか……なるほど。
ようやくすべての謎が解けて、すっきりした……はずなのに。
なのになんで……こんなに……

視界に、涙の膜が張る。
バカみたい。なんで、泣くのよ、今? 

ググっとさらに工藤さんの手に力が入った。

「あ……くっ……!!」

酸素が……
息が、できない……指先の感覚も、すでにない。
全身が、痙攣して……
わたし……死ぬの?

拓巳……もう……会えない……


視界が……ぼやけていく。

< 270 / 302 >

この作品をシェア

pagetop