Mysterious Lover
ドンッ!!!
ものすごい音がして、次の瞬間、わたしの上から工藤さんの体重が掻き消えた。
ゲホゲホッ……ゲホゲホゲホッ!!
急に圧迫感から解放されて、気管に大量の酸素が流れ込み、わたしはそれを処理しきれなくて、派手に咳き込んだ。
汗に濡れた前髪の間から、床にはいつくばる工藤さんの姿が見えた。
そのまま顔をあげていくと……。
いるはずのない人の姿をそこに認めて、わたしは薬が幻覚を見せてるのかと思っちゃった。
「た……くみ……?」
拓巳が、立っていた。
工藤さんの襟元をつかみ、引きずって壁に叩き付ける。
「拓巳……だと!? なんでお前っ!」
「てめっ……よくも……奈央さんをっ……」
拓巳のこぶしが、振り上げられた。