Mysterious Lover

拓巳は嫌悪をあらわにした視線を、そちらへ投げた。
「ずっと盗聴してたこと、バレてないとでも思ったのかよ? 仕掛けられた電波探すのに手間取ったけどな。ジャックするのは簡単だった。今夜の奈央さんとの会話、もう全部警察に漏れてるんだよ」

「な……っ……!」

「これが……あんたが奈央さんにつけた盗聴器、だよな?」

拓巳はわたしの手首から、腕時計をはずす。

あ……工藤さんの、プレゼント。あれが……?

警察官が差し出したビニール袋にそれが落ちると、忌々しそうなうめき声を残して、工藤さんがリビングから消えていった。



あぁ……助かったんだ、わたし。

生きてるんだ……よかった……。
一気に全身の力が抜けてしまったわたしを、拓巳がギュッと支えてくれた。

なんとかまぶたを開けて、拓巳を見上げる。
視界はまだすこしかすんでいたけれど、もう歪んではいなかった。

拓巳だ。

拓巳が、目の前に……いた。
涙ぐみそうになってる自分に気づいて、瞬きを繰り返した。
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