Mysterious Lover

たった1週間会っていないだけなのに、なんだか拓巳、少し痩せたみたい。

「警察がなかなか動いてくれなくて、マジ焦った。怖い思いさせて、ほんとにごめん」

わたしの頬に触れる彼の手が、震えてる。
ほんとに、一生懸命守ろうとしてくれたんだね。わたしのこと。

過去の贖罪……
拓巳は何もしてないのに。
知らんぷりだって、できたのに。

ほんと、あの人が言ってた通りかも。
クソ真面目って。
チャラ男なんて言って、ごめんね。


もう……いいと思った。

不思議なほど、気持ちは凪いでいて。

彼と、彼の母親と。
きっと、彼らには彼らの、他人には言えないような苦労もあったはず。
わたしだけじゃない。
お母さんだけじゃない。

だから、もう、いい。
もう、拓巳を、憎みたくない。
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