Mysterious Lover
「えええっ」「マジかよ」って、みんなが口々に叫ぶ。
「なんだよ、お前もう戻ってこないわけ?」
「アメリカ戻って、経営の勉強しようかなって」
アメリカ!?
流れてきた会話に、パソコンの画面を見たまま、固まってしまった。
そんな……。
アメリカ……そんな遠く。
わかってたはずなのに。覚悟してたはずなのに。
平気な顔して送り出したいのに……。
やだ……なんでこんなに……胸が痛いの?
足音が、近づいてくる。
「……奈央さん、ちょっと2人で話してもいい?」
わたしだけに向けられた、その笑顔に、
きゅんっ——
甘く、胸が鳴る。
「う…うん」
跳ね上がった鼓動を隠すように、顔を伏せて立ち上がる。
みんなの視線を感じながら、わたしは拓巳の後を追った。