Mysterious Lover
やだ……また……
ビクビクしながらかばんを開けると、スマホの画面が瞬いてる。着信だ。
画面を見る前に、もうなんとなく、非通知だっていう予感がしていた。
そして、その予感は、的中して。
住宅街に不似合いな、明るい軽やかな音が鳴り続けてる。
取りたくない、取りたくないけど……
どうしたらいいのか、軽くパニックになったわたしは、とにかく音を消したい一心で手をのばしていた。
「……はい」
『……』
やっぱり。無言電話だ。
足にぐっと力を入れ、湧き上がる心細さを押し殺す。
しっかりしなさい。弱気になったら負けよ!
「どっどなたか知りませんけど、自分にされたらいやなこと、他人にしちゃいけませんて、教わりませんでした?」
『…………』
そしてわたしの耳は、またあのコポコポ……っていう水音をとらえた。
それから……
ピチャン……ピチャン……て、しずくの音も。
やっぱり、昨日の電話と同じ相手だ。
ギュッて唇を引き結び、通話をオフにしようとした時。