Mysterious Lover

「は? 誤解?」

「オレが奈央さんの前に現れて、告って、体張って……それ全部、奈央さんから親父奪ったことへの償い、とか思ってるだろ?」

「だって……そうなんでしょ?」

すると、拓巳は口をつぐんで、少し視線を逸らした。なんか……顔が赤いような?

「……8年」
ぽつりと落ちた言葉を、なんとか耳で拾う。

「え? はち……ねん? て、何が?」

「オレが……奈央さんに片想いしてた時間」

「え……あ……はち……ええっ!?」
な、何それっ? はち……にち、とかの聞き間違いじゃなく?

唖然としたわたしに、拓巳は「やっぱ引くかぁ」なんて髪をくしゃくしゃかきまわしてる。

「どっどういうこと?」

赤い顔を隠すように片手で覆って、拓巳は空を仰いだ。
「高校生の時……奈央さんのさ、写真を見たんだ。T大学の校門の前で写ってるやつ。たぶん、入学式の時の」
< 282 / 302 >

この作品をシェア

pagetop