Mysterious Lover
「は? 誤解?」
「オレが奈央さんの前に現れて、告って、体張って……それ全部、奈央さんから親父奪ったことへの償い、とか思ってるだろ?」
「だって……そうなんでしょ?」
すると、拓巳は口をつぐんで、少し視線を逸らした。なんか……顔が赤いような?
「……8年」
ぽつりと落ちた言葉を、なんとか耳で拾う。
「え? はち……ねん? て、何が?」
「オレが……奈央さんに片想いしてた時間」
「え……あ……はち……ええっ!?」
な、何それっ? はち……にち、とかの聞き間違いじゃなく?
唖然としたわたしに、拓巳は「やっぱ引くかぁ」なんて髪をくしゃくしゃかきまわしてる。
「どっどういうこと?」
赤い顔を隠すように片手で覆って、拓巳は空を仰いだ。
「高校生の時……奈央さんのさ、写真を見たんだ。T大学の校門の前で写ってるやつ。たぶん、入学式の時の」