Mysterious Lover
大学の、入学式? なんでそんな写真なんか……。
「奈央さんのお母さんが、定期的に親父に奈央さんの近況知らせてたみたいで。親父の手帳の中に、写真がはさんであってさ。それを偶然見つけたんだ」
お母さんが……お父さんに?
「……一目惚れだった」
低くかすれた声が、強く鼓膜をゆさぶった。
顔をあげると、拓巳の視線に捕らわれて、そらせなくなってしまう。
「すっげぇきれいな人だなって、何度も写真こっそり見て。それだけじゃ我慢できなくて、T大まで会いに行って」
「ええっ!? 大学まで!?」
拓巳は頷いた。
「大学祭に遊びに行って、ほんの一言だけ、話したこともあるよ」
え……ウソ! 全く、覚えてない。
「アイドルの追っかけみたいにさ、いつも奈央さんの姿を探してた。笑う奈央さん、怒る奈央さん、真剣な奈央さん……見つめれば見つめるほど、もう、なんか感情がオーバーヒートするんじゃないかってくらい、奈央さんに夢中になってた。
でも……バカだよなオレ。後戻りできないところまで来てしまってから、ようやく気づいたんだ。この片想いは……絶対実らないって」
拓巳は暗く陰った視線を揺らして、自嘲気味に微笑んだ。
「オレが誰か知ったら、奈央さんはきっとオレを憎む。絶対に、受け入れてなんてくれやしない。永遠に」