Mysterious Lover
「だから……大学、アメリカに行くことにしたんだ。手の届かない距離まで離れれば、きっと忘れられるだろうって思って。
でも…………できなかった。何をしてても、やっぱりあなたを思い出してしまう。あなたの声を、聞きたくなってしまう。今、奈央さんは何をしてるんだろう。誰と一緒にいるんだろう。……どんな男と、つきあってるんだろう……。苦しくて……苦しくて、気が狂いそうだった」
拓巳が、わたしを見つめる。
それは、熱い想いのこもったまなざしで、わたしは胸がきゅんと甘く音をたてるのをどうすることもできなかった。
「それで、帰国を決めた。今度こそ、全部打ち明けて、ちゃんと告白して、それですっきり振られようって。そうしないと、これ以上前に進めないってことに気づいたから。
でも、奈央さん探し出して、街で歩くの見つけて……ゾッとした。あの男が、あなたの隣を歩いていたから」
「工藤さんね?」
拓巳は頷いた。
「あいつが、何の下心もなしに奈央さんに近づくはずがない。お袋に未練タラタラだったのはオレが一番よく知ってるから。何の目的で奈央さんのそばにって……呼び出して」
「守ってくれようとしたんだよね」
「結局……怖い思いさせちゃったけどね」