Mysterious Lover
「でも……守ってくれた。……ほんとに、ありがとう」
「当たり前だろ。奈央さんはオレにとって、誰よりも大切な人だから」
大切な、人。……わたし、が?
カアッて、頬が血が上っていくのがわかる。
「だから、これで終わりにする」
「……え?」
「もう、奈央さんを煩わせることはしない」
「……拓巳?」
唐突なその言葉の意味が飲み込めなくて、わたしは拓巳を見上げた。
「『許さない』って言っただろ?」
あ……
——あなたも、あなたの母親も、絶対許さないから!
「あ……あれは……」
「あの時、思い知らされた。オレの存在は、奈央さんにとって思い出したくない過去なんだって。……実はちょっとだけさ、うぬぼれてたんだ。奈央さん、オレのこと、好きになってくれたんじゃないかって。すべてを知っても、もしかしたら許してくれるかもしれないって。でも……やっぱり無理だよな」