Mysterious Lover

チーズケーキだ。


——いいじゃん、オレ、チーズケーキ好きなんだから。

——めちゃくちゃおいしいチーズケーキが目の前にあってさ、いつ食べようか、どうやって食べようか、誰かに盗られるといけないから、隠しておこうか、とか考えすぎて、賞味期限切れてた、みたいな。


拓巳……拓巳……
拓巳……

明るい、あの笑い声が、耳元に響く。
奈央さん、てわたしを呼ぶ、甘やかな、声。

拓巳……拓巳……

涙が、こぼれた。

「あれ……なんか、変……」


あとからあとから、涙腺のスイッチが壊れちゃったみたいに。
涙が止まらない。

あぁ、わたし、バカだな。
バカだ。
こんなにも、拓巳が……拓巳のことが……
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