Mysterious Lover
5. アイノアカシ
「ああっすみません、ちょっと待ってっ!」
閉まりかけたエレベーターのドアを無理やり両手を使ってこじ開けて、わたしは中へ滑りこんだ。
「27階、お願いします」
迷惑そうないくつもの視線は無視。
こっちは睡魔と戦うだけで精一杯なのよっ!
まぶたが、もう落ちそうなんだから。
あのボイスチェンジャーの変な声を思い出してしまって、なかなか眠れなくて。
着信が怖くて電源を落として寝たから、いつもセットしてるスマホのアラームが鳴らなくて、思いがけず寝過ごしちゃって……
10時過ぎ、ようやく出社、てわけ。
クルクル変わっていく階数表示を見上げながら、わたしの心拍数も少しずつ上がっていく。
あいつ、プレゼント、って言ってた。
愛の証、とか。
一体、何のことだろう? 一体何が……。
会社の中なら、大丈夫よね。
大丈夫。工藤さんだってみんなだっているんだし、何もできやしないわよ。
大丈夫。
胸元をギュッとつかんで、顔を上げた。