Mysterious Lover
「おはようっ」
ダッシュで制作部にたどり着く。
「おはよ」
「おはよー」
「おっす」
「おはよ」
いつも通りのメンバーがいつも通りに声をかけてくれて、なんだかそれだけでうれしい。……わたし、病んでるかなぁちょっと。
とりあえず、デスクの上には、不審な荷物等はなし。
ホッと胸をなでおろした。
工藤さんは……席にいない。会議中かな?
ふぅ、助かった!
制作部は深夜残業も珍しくないから、出社時間にはそれほど厳しくないけど。
やっぱり上司の目の前で遅刻っていうのは……少し気が咎めるから。
「おはようございます奈央さん」
翠とは反対側、右隣のデスクに亀井くんの笑顔があった。
う。嫌味なくらい爽やかだなぁ。
睡眠不足のしょぼついた目で見ると、なんか後光がさしてるみたい。
一瞬、昨夜の嫌な出来事を忘れてしまう。
ほんっと、タダモノじゃないわよね、こいつの美貌って。