Mysterious Lover
それを眺めながら、混乱した頭のまま椅子にへたりこんだ。
とにかく……よかった……。
これからはきちんとバックアップとるようにしなくちゃ。
「奈央さん? はい」
唐突に亀井くんの声がして、わたしは「え?」て、差し出された手を見下ろした。
何? この手は。
「お礼は?」
「お礼っ!?」
ええっ!? もしかして、お金とるの!?
そりゃ、確かに外で頼めばお金発生するけど。
……うう。
「今そんなに持ってないんだけど……ちょっと待って」
カバンの中をさぐってお財布を取り出そうとすると、
亀井くん、ケラケラケラってお腹をかかえて笑いだした。
「んなわけないでしょ。奈央さんからオレが金とるわけないじゃん」
「え? でも今お礼って……」
「違う違う。金じゃなくて。……そうだなあ。オレ、奈央さんの手料理食いたい」
「はあっ!?」