Mysterious Lover
「なななに言ってんの。ここ、会社だし……」
「奈央さんだって、相馬さんのこと、『翠』って呼び捨てにしてるじゃん」
う。それは、確かに、そうだけどっ。
「たーくーみー。ほら、呼んでみて」
見とれてしまうくらいきれいな顔が、わたしを覗き込む。
みんなが興味しんしんて顔で注目してるし……。
ああもうっ!
とにかくその場をやり過ごしたくて、しぶしぶ口を開く。
「た……く、み……」
もごもごってつぶやくと、一瞬、彼の双眸がふっと大きく開いた。
え……?
今、その瞳が潤んだような……
「ぃよっしゃああっ!」
突然、派手なガッツポーズのリアクション。
え?
あのぉ……
「パソコンやっててよかったああっ!」
あっけにとられて、大げさに泣き真似する彼を見つめた。