Mysterious Lover

「なななに言ってんの。ここ、会社だし……」

「奈央さんだって、相馬さんのこと、『翠』って呼び捨てにしてるじゃん」

う。それは、確かに、そうだけどっ。

「たーくーみー。ほら、呼んでみて」

見とれてしまうくらいきれいな顔が、わたしを覗き込む。
みんなが興味しんしんて顔で注目してるし……。

ああもうっ!
とにかくその場をやり過ごしたくて、しぶしぶ口を開く。

「た……く、み……」

もごもごってつぶやくと、一瞬、彼の双眸がふっと大きく開いた。

え……?

今、その瞳が潤んだような……

「ぃよっしゃああっ!」

突然、派手なガッツポーズのリアクション。

え?
あのぉ……

「パソコンやっててよかったああっ!」

あっけにとられて、大げさに泣き真似する彼を見つめた。
< 40 / 302 >

この作品をシェア

pagetop