Mysterious Lover
「おいおい、お前マジで泣いてんじゃねえのぉ?」
田所が亀井くんの頭をワシワシってなでると、部内に再び笑いが沸いた。
「なんか彼、いいキャラしてんねえ。あたし好きだな、ああいうの」
翠がおもしろそうにつぶやく。
わたしも思わずうなずいてしまった。
最初は単にイケメンってだけなのかと思ったら、なんかそうじゃないみたいで。
なんだろう……? 人を惹きつけてしまう何かがある。
くるくる表情が変わる。
でも。
決して光を失わない。
だから……目が離せない。
やっやだ、なんであんな奴に見とれてるんだろう。
わたしはあたふた、亀井くんから視線をはがして、新田自動車のスケジュール表をプリントアウトし始めた。