Mysterious Lover

◇◇◇◇
少し酔いを醒ましたいなって。
わたしはブラブラ、あてもなく夜の街を歩く。
夜は少し冷えるようになってきたけど、アルコールのおかげか、今夜は全然気にならない。

さすが六本木ねぇ。

昼間かと勘違いしてしまいそうなほど、にぎやかに行きかう人の言葉は多国籍で、肌の色もまちまちで。
観光客みたいにキョロキョロしながら歩いていると、華やかな原色ネオンに彩られた通りに出た。ずらりと並んでいるのは、派手な店構えのキャバクラやホストクラブ。

黒服の呼び込みを無視して、でもチラリチラリとエントランス横の写真をチェックしてしまう。

この程度のレベルでホストなんて、よくできるわよね。
拓巳がこの中に入ったら、きっと1日で売り上げ何倍、何十倍……

「新島様のようにお美しい方にそう言っていただけると、うれしくてのぼせてしまいますね」

「まぁやだあ、たっくんたら!」

風に乗って聞こえてきた声に、わたしはパタッて足を止めた。

え?

今、なんか聞き覚えのある声が……

声のした方へ目を向けると、純白のスーツを着こなしたホストらしき長身の男が、上着の裾をひらりとひらめかせ、まるで執事のように、うやうやしくタクシーのドアを開けているところだった。

恋する乙女といった感じのミドルな女性が、うっとりと視線をホストに固定したまま、タクシーに乗り込んでいく。
「絶対また指名するわね」
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