Mysterious Lover
バタン——
ざわめきが遮断されて、2人きりの濃密な空間が出来上がる。
心拍数が上がってしまったことをごまかしたくて、わたしは「何よ」って、ギュッときつい目線を上げた。
言い訳なんかしたって、無駄なんだから。
あんたの正体なんて、もうお見通しよ。このチャラ男!
でも、見上げた拓巳の目は、いつもの無邪気な、あの目じゃなくて。
いつになく思いつめたような光があって、気圧されてしまう。
なに……? 何が言いたいの?
そして拓巳は……
いきなり両手をバンって合わせて、ガバッと頭を下げた。
は?
「お願いします!」
「え?」
「会社には言わないでください! バイトのこと」
そしてあの必殺スマイルで「ねっ」と、わたしを拝む。