Mysterious Lover
「副業禁止ですよね、うちって。バレたらクビだもんなぁ」
まさか奈央さんに見つかっちゃうとはなあ、世間って狭いなぁ、ま、見つかっちゃったものは仕方ないか、拓巳は一人、肩をすくめてケラケラって笑ってる。
「はあ」
何を期待してたんだろ、わたし。何を言われるって。
結局、やっぱりチャラ男なんじゃない。
なんだかバカバカしくなって、力が抜けてしまう。
「別に……言ったりしないわよ。でも気を付けた方がいいんじゃないの? 六本木なんて、うちの業界の人間うようよ歩いてるんだから」
「あぁ、そっか、そうだよね。気を付けます」
悪びれない顔で、にっこり微笑む。
こいつ、ほんとにわかってんの?
「なんでそんなリスク背負ってまでバイトなんかするのよ?」
ちょっと好奇心から聞いてみる。うち、結構大手だし、お給料だって悪くないはずだけど?
「だってオレ、24ですよ? まだまだ遊びたい盛りってやつですから」
あ、そうですか……。
「ふぅん。お金のためなら、愛もささやけちゃうわけだ」
ぽろっと言うと、「あれ」って拓巳がにやりと笑った。
「もしかして奈央さん……妬いてる?」