Mysterious Lover
「はあっ!? そっそんなわけないでしょ!」
「大丈夫ですよ」
拓巳が近づいてきて、わたしはその分、後ずさった。
トン——
中央に置かれたテーブルに突き当たって、それ以上、下がれなくなってしまう。
ちょ……ちょっと、近すぎるから!
あの悪魔みたいな美貌が、ぐいってわたしに接近する。
「オレ、仕事とプライベートは、きっちり分ける主義だから」
「は?」
「奈央さんさえOKなら、オレのプライベートは、全部奈央さんのものだよ」
「う……」
け、結構ですっ……!
「……ね、奈央さん」
甘い吐息にくるまれた拓巳の言葉が、耳朶をくすぐる。
「な、何よっ?」
「バイトのこと、絶対、会社には内緒ですよ? 口止め料も払うから」
「え? く、口止め料って……別にそんなもの」
「受け取ってください。カラダで払いますから」
彼は片手でネクタイの結び目に指を入れると、ぐいっとそれを引いて、緩めた。
乱れた襟元から色気が振りまかれ、わたしは不覚にもドキッとしてしまう。