Mysterious Lover

◇◇◇◇
「あああの工藤さん、ちょ……工藤さん?」

工藤さんは屋上へ続くドアを開けると、わたしの腕をつかんで引きずるように歩いた。

うちのビルの屋上は、テナント企業の社員すべてに開放された、リラックススペースで。
花壇や芝生が整備されていて、公園のような憩の空間になっている。
お昼時には、お弁当を持ち込む人でにぎわうけど、就業時間中だとそれほど人の姿は多くない。

背の高い植木の影に連れ込まれたわたしは、強い力で引き寄せられて、工藤さんの胸の中につんのめるように倒れ込んだ。

「く、工藤さん!?」

体を起こすと、そのまま顎を捉えられて上向かされ……瞬く間に唇がふさがれていた。
「あ……くどっ」
熱く、強く、押し付けられる唇に、くらくらしてしまう。

「何してたんだ?」
下唇に、工藤さんが甘くかみついた。

「え?」

「亀井と2人きりで、会議室で何してた?」

あ……見られてた……
< 63 / 302 >

この作品をシェア

pagetop