Mysterious Lover
思いっきり脱力しながら、フロアの隅、ぽつんと離れた自販機コーナーでブラックコーヒーのボタンを押した。
「何なに〜いい雰囲気じゃない2人」
にぃっと笑いながら近づいてきたのは翠だ。
「なっなんのこと?」
「とぼけないの。もしかしてもう付き合ってんの? 奈央とカメちゃんて」
「ちょっ……翠、変なこと言わないでよっ」
「なんだ、まだなの」
「まだっていうか、絶対、ないから!」
「そう? いいと思うけどなあ2人。なんか最近、生き生きしてるもん。奈央」
「ややややめてよっ」
その時、きゃあっって小さくあちこちから悲鳴があがって、わたしたちは何ごとかと振り返った。
みんなの視線をたどると、中央のデスクで、拓巳と工藤さんが打ち合わせをしているところだった。
——イケメン2人のコラボって、ど迫力ね! 絵になる〜
——なんかさ、まんまドラマのワンシーンだよね〜!
う、確かに。
2人ともオーラありまくりだ。
「この果報者め。うちの最強ツートップから想われるなんて」
あのね……サッカーじゃないんだから。