Mysterious Lover

「だいたい、あいつの愛想のよさはわたしだけじゃないし」
そもそもホストだし、と言いかけて、口をつぐむ。
一応、内緒にするって約束したもんね。

「誰にだって優しいし。あいつにとって、恋愛なんてきっとゲームみたいなものなのよ。いつ落ちるか、どうやって落とすか。落としたらそれで終わり、満足して、もう興味なくなっちゃう、みたいな。愛してるとか、好きとか、きっとたいした意味もなく言えちゃうの」

「そうかなあ。あたしはさ、奈央のこと、マジだと思うけど」

「え?」

「気が付かないかなあ? あいつ、奈央にだけ、明らかに態度違うよ」

「そ……そう?」
別に、普通に見えるけど?

「自分から『亀井くーん』てすり寄ってくる女子にはさ、一見人当たりよく対応してるけど、目が笑ってない感じ。どっか線ひいて、こっから中入るなって、拒絶してる。それがさ、奈央相手だと全然違うの」

「違う?」

「そう。目がさ、なんかこう、とろけそうなの。好き好き好き〜!って、心の声が駄々漏れてるよ」

「駄々漏れ……って、んなわけないでしょ」

勝手に頬が赤く染まっていくのがわかる。
やだ、これじゃ意識してますって言ってるみたいじゃない。

「だからさ、ちょっと気を付けて」

「え?」

翠は声をひそめて耳打ちしてくる。
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