Mysterious Lover
「最近、本気でカメちゃんのこと狙ってる女子、増殖中だからさ。奈央恨まれてるよ。闇討ちとかされないように気を付けなさいよ」
「闇討ちって、それいつの時代の……」
笑い飛ばそうとして、でも顔が奇妙にひきつって笑えなかった。
あの、奇妙なボイスチェンジャーの声が耳の奥によみがえったから。
——君ハ、僕ノモノダカラネ。
あれから何もないけど。
だから、安心してたけど。
ほんとに、もう終わったの……?
もしも……
ふと頭に浮かんだ想像に、わたしはこめかみを押さえた。
嫌がらせ、っていう意味だったら、何も犯人は男とは限らないわけよね。
女子っていう可能性だって。
わたしは社内を見回した。
見慣れた風景、見慣れた同僚たちの顔……
この中に、本当にストーカーがいるの……?
この中の誰かを、疑わなきゃいけないの?
一体誰を信じて、誰を……?
ぎゅうっと……両手を握りしめた。