Mysterious Lover

「なんだぁ沢木、よかったじゃん。あんたのワーカホリックぶり、ちょっと心配だったんだよねえ」

「違います! 違いますから!!」
わたしが全力で否定していると。

「今日は賑やかだなあ」

のほほんとした声が入口からして、一人の中年男性が、のそのそという表現がぴったりの動きで入ってきた。あごにはおなじみの無精ひげ。
仕事以外のことに時間かける気しないんだよねえ、が口癖。こちらが。
「高林さん、今日はよろしくお願いします!」

「ん、よろしくー。あれま、こりゃまた男前がいるねえ」
カメラ機材が詰まった重そうな荷物をおろしながら、高林さんが目を丸くしている。
普段から美男美女なんて見慣れているだろう2人から見ても、やっぱり拓巳のイケメンっぷりは別格に映るんだなぁ。

「高さん、この子、沢木の男なんだって」

「宮本さん! 何言ってるんですか! 高林さんっ違いますから! 誤解しないでくださいっ!」

「そぉかあ、沢ちゃん、お嫁に行っちゃうのかあ」

「なんでいきなり飛ぶんですかっ!」

拓巳が後ろで大爆笑してる。

なんでこんなに撮影前から疲れてるんだろ、わたし……。
はぁ……。
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