Mysterious Lover
なんとか2人と拓巳との名刺交換を仕切り、なんとか撮影準備が再びスタート。
拓巳に彼らの準備のサポートを任せ、わたしはスタッフ用のドリンク類の準備を始める。
今回は、20代の女性向けファッション誌「ヴィラ」に掲載する、クリスマスプレゼント用ジュエリーの記事広告のお仕事で、クライアントはジュエリーブランドのTOWAZI(トワズ)。
「クリスマスに贈りたい、とっておきギフト」っていうコンセプトの記事展開をしつつ、実はトワズの商品を紹介する内容になっている。
「沢ちゃん、今回も中里氏は来ないんだっけ?」
高林さんの声に、わたしは頷いた。
中里さんっていうのは、トワズの広報の方。
ここの仕事は、いつも宮本さんと高林さん、そしてわたしが担当しているから、みんな顔なじみで。
そのせいか、急な会議や出張が重なると、中里さんは、立ち合いなしでわたしたちに撮影を任せてくれることも多い。
企画とラフはもう了解がでているから、特に問題はないんだけど、立ち合いがないのはやっぱり少し緊張しちゃうかな。
「なので、準備できたら早速始めましょう」
わたしが言うと、高林さんは「了解」とカメラを取り上げた。
「じゃ、ちゃちゃっと行きますかー」
高林さんの言葉で撮影開始だ。
高林さんも宮本さんも、かなりマイペースで個性的だけど、どちらも業界内では知らない人のいないベテランだし、きっとスムーズに終わるはず。
と思ったんだけど……。