Mysterious Lover
◇◇◇◇
「う〜ん……」
高林さんは、ファインダーから視線をあげて、唸った。
わたしたちは、邪魔をしないように、遠巻きに見つめるだけ。
ジュエリーは、1つ1つの商品が小さく、配置がとても難しい上、固定する時の角度によって、ボディに余計なものが写り込んでしまわないか十分注意を払わなければならず、カメラマン泣かせの仕事だ。
もちろん、最近はパソコン上で修正できるから、昔ほど難しいってわけじゃないけど、ナチュラルな輝きを求めるなら、やっぱりかなりのテクニックが必要になる。
今回はクリスマスギフトっていうコンセプトだから、企画での提案通り、宮本さんはヨーロッパっぽい額縁や、天使のオーナメント、ミニサイズのギフトボックスといったアイテムを用意してくれていた。
それらを配置して、リングやネックレスを置いてみたんだけど。
……うーん……。
なんかイマイチおさまりが悪いような……気がするのはわたしだけかな?
写り込みもかなりあるし……。
もちろん、全然悪くない。クリスマスのゴージャス感はよく出ているし。
悪くないんだけど……。
「ん〜……ま、こんなもんかな」
ついに、高林さんがカメラを置いた。
「そうですね……」
高林さんがOKというんだし。
このスタイリングで、もうクライアントもOK出してることだし。
「じゃ、これでOKってことに……」
わたしが言いかけた時だった。
「オレは、もう少しシンプルな方がいいと思いますけど」