Mysterious Lover
……ふと宮本さんの眉がゆるんだ。
「いいんじゃないですか、それ」
顔をあげて、拓巳に微笑んだ。
「実はわたしも、ちょっとゴテゴテしすぎるかもって思ってたんだよね。言ってもらってすっきりした。ありがとね。……あの花はさ、実は明日の別件撮影用なんだけど。ま、また別のを用意すればいいし。こっちで使ってもらって構わない」
高林さんは「よし」って再びカメラに手を伸ばした。
「宮本ちゃんがOKなら、ぼくの方は全然いいよー。でも今から全部組み直しだから、相当時間は押すよ?」
「オレも手伝います」
「ん、よろしくー」
「高さん、花だけどさ、バックに置くより、下に置いて、真俯瞰で撮るってどうかな?」
「ガラスかませるってことかい?」
「うん、そう。バックだと、大きさ的に距離感が難しいと思うんだよね。すりガラスっぽいものなら、真下でも花がそれほど主張しないでしょ?」
「あぁはいはい。ぼかすわけ?」
「そう」
「ん、いいかもしれないね。たしかスタジオにガラス板の予備っておいてあったよねえ?」
「あ、オレ、聞いてきます!」
走り出そうとした拓巳を、わたしは大慌てで「ちょっと待って!」って呼び止めた。
3対の目がそろってわたしを見る。