Mysterious Lover
「なかなかいないよねえ、あんなにはっきり物言う新人くんてさあ」
高林さんの目は拓巳を見ている。
「すっすみません、生意気なヤツで……」
首をすくめて恐縮するわたしに、高林さんは穏やかに首を振る。
「自分の意見を持ってるってさぁ、すごくいいことだと思うよ。宮本ちゃんやぼくは、船で言ったら単なる漕ぎ手の一人でしょ。地図を描いて舵を取るのは、沢ちゃんたち編集さんだから。ぼくらがどんなに必死に漕いでも、舵取りがふら付いてたら、難破しちゃうからねえ」
その小さな目をさらに細くして、高林さんは笑った。
「いい新人が入ったねえ」
「は……はいっ! ありがとうございます」
わたしはまた、拓巳に視線を戻した。
なぜだろう?
チャラ男じゃない拓巳を見られて……今日はなんだかすごく、うれしかった。