Mysterious Lover
「……そうだね。おやつしか食べてないもんね」
何気なく言った途端、拓巳は「マジで?」って破顔した。
「やった、奈央さんとデートっ」
「いや、違うと思うけど……デートじゃ」
「デート♪ デート♪」
人の話を全く聞かず、拓巳はするする階段を下りていく。
もおっ。
仕方ないなぁ、って、
でも、実は嫌なわけじゃなくて……
そんな自分の気持ちを扱いかねながら、わたしも階段を下りかけた。
その時。
リリリリリリ………
着信だ……
周囲のざわめきにも関わらず、その音はわたしの耳に禍々しいほどはっきり届いた。
ピタって足が止まる。
嫌な予感がする。
まさか……まさか……