Mysterious Lover
◇◇◇◇
通勤電車並みに混みあったエレベーターから吐き出されて、わたしは27階のフロアに足を踏み入れた。
AKEBONOは、業界でも上位に入る広告制作会社だ。
ワンフロアをぶち抜いた見晴らしのいいオフィスには、営業、総務等、各部署がそれぞれ固まってデスクを並べている。
そのほぼ中央、一番広いスペースを占拠しているのが、我が制作部。
編集、デザイン、ウェブの3チームから構成されていて、わたしの所属は編集だ。主に、雑誌の記事と連動した企業広告、いわゆる記事広告の制作を担当してる。
この会社に中途入社してようやく2年、社員同士の仲もよくて、部署間の風通しもよくて、ほんとに転職して正解だったって思ってる。
わたしはマックをにらんでいたデザインチームの相馬翠(そうま みどり)に「おはよ」って声をかけて、隣のデスクにカバンを置いた。
「おはよー。昨夜遅かったんでしょ、大丈夫?」
「うん平気。昨日はなんとかお風呂まで入れた」
「女子にあるまじき発言だね」
呆れたような翠の言葉に、「まったくね」と苦笑を返す。
仕方ないわよ、マスコミ業界なんてこんなものだ。
好きで選んだ道だから、後悔はしてない。
「ねえ奈央、なんか気づかない?」
パソコンを立ち上げていたわたしの方へ、翠が体を乗り出してきた。
「え? 何が?」
「社内、ざわついてるっしょ」
通勤電車並みに混みあったエレベーターから吐き出されて、わたしは27階のフロアに足を踏み入れた。
AKEBONOは、業界でも上位に入る広告制作会社だ。
ワンフロアをぶち抜いた見晴らしのいいオフィスには、営業、総務等、各部署がそれぞれ固まってデスクを並べている。
そのほぼ中央、一番広いスペースを占拠しているのが、我が制作部。
編集、デザイン、ウェブの3チームから構成されていて、わたしの所属は編集だ。主に、雑誌の記事と連動した企業広告、いわゆる記事広告の制作を担当してる。
この会社に中途入社してようやく2年、社員同士の仲もよくて、部署間の風通しもよくて、ほんとに転職して正解だったって思ってる。
わたしはマックをにらんでいたデザインチームの相馬翠(そうま みどり)に「おはよ」って声をかけて、隣のデスクにカバンを置いた。
「おはよー。昨夜遅かったんでしょ、大丈夫?」
「うん平気。昨日はなんとかお風呂まで入れた」
「女子にあるまじき発言だね」
呆れたような翠の言葉に、「まったくね」と苦笑を返す。
仕方ないわよ、マスコミ業界なんてこんなものだ。
好きで選んだ道だから、後悔はしてない。
「ねえ奈央、なんか気づかない?」
パソコンを立ち上げていたわたしの方へ、翠が体を乗り出してきた。
「え? 何が?」
「社内、ざわついてるっしょ」