Mysterious Lover
◇◇◇◇
倒れた時膝を擦りむいていたわたしは、拓巳に無理やり引っ張られるようにして駅の事務室へ。
そこで救急箱を貸してもらって消毒して、一応絆創膏だけ貼っておく。
ストッキングを脱いだ生足に絆創膏って……
あぁ、ものすっごくマヌケな格好。
情けなさすぎ……なんて落ち込みながら、事務室を後にする。
並んで歩きながら、わたしは拓巳に「ほんとにごめんね」って謝った。
「なんで謝るんですか?」
ムッとした顔がわたしを見る。
「だって……拓巳まで巻き込んで。迷惑かけちゃって」
そういうと、はあってため息。
そして拓巳の足が止まった。
「……拓巳?」
「いい加減理解してくださいね。オレが奈央さんのこと本気だって」
呆れたような声が降る。
「好きな人のために何かできるって、めちゃくちゃうれしいんですよ?」
「う」と言葉を失ってうつむいたわたしの顎に、長い指がからんできて、上向かされた。
「ああああの、拓巳……?」
み、みんな見てるんですが……。
「いつでも、どんなことでもいいから。どんどん頼ってください」
笑みを消した拓巳のまなざしから、目がそらせない。