Mysterious Lover
わたしは……
工藤さんと拓巳、2人を見比べて。
頭が真っ白になる。
ど、どうしろって……いうのよ?
立ちすくんだままのわたしの手を、工藤さんがつかんだ。
「くだらないこと聞くな」
そのまま無理やり工藤さんの腕の中へ引き込まれる。
「亀井、この際だからはっきり言っておく。沢木は俺とつきあってる。余計な横ヤリ、いれないでもらおうか」
びっくりして、わたしは工藤さんを振り仰いだ。
……今、付き合ってるって……言った?
「奈央さん?」
拓巳の声に、ハッと視線を戻すと、わたしを食い入るように見る彼の目とぶつかった。
「……」
わたしは……揺れてしまう目を、思わず伏せていた。
コツ……
足音が遠ざかっていく。
拓巳は二度と、振り返らなかった。