Mysterious Lover
「は……初めて、ですね」
「え?」
「工藤さんが、わたしたちつきあってるって認めてくれたの、初めて」
そういうと、工藤さんは驚いたようにわたしを見つめた。
「いや、俺はずっとつきあってるつもりだったけど……」
「え……そう……ですか」
「もしかして、不安にさせてたか?」
「いいえっ! そんな!」
ブンブン首をふって……
『いいえ、そんな』?
とっさに口から飛び出した言葉を、頭のなかで反芻した。
そして改めて自分の心をのぞいてみて、愕然とした。
工藤さんと付き合ってる。やっと認めてもらったその事実なのに。
「うれしい」も、「幸せ」も、「安堵」も、何の感情も、そこにはなくて。
ただ、驚いただけ。
じゃあわたしは……好き、なのかな、この人が。
なんだろう、なんだかとっても……大事なことを、考えなくちゃいけないような。
心が……揺れる。