Mysterious Lover
「亀井のことは、どう思ってるんだ?」
「え……?」
いつのまにか、工藤さんはわたしのすぐそばに来ていた。
「どうって……別に、なんとも。ただの同僚です」
「そうは見えなかったけど?」
ドキリとする。
自分の心の中を、無理やり覗き込まれたみたいで。
「俺は余計なことをしたのかな。奈央は、あいつに送ってもらいたかったんじゃないか?」
「まっまさかっ! あるわけないじゃないですか。だいたいあいつはこの後……」
この後。
そうだ。
しん……と心が冷えていく。
あいつはホスト。
今頃、あの真っ白なスーツに身を包んで、女性の手を握ってるに違いない。
わたしは彼の、昼間の姿しか知らない……。
「この後?」
工藤さんの訝しそうな顔に、急いで手を振る。