こい
「あいちゃん、ちょっと」
退屈な時間以上に自分の気持ちを持て余していた私は、おばさんに呼ばれて会場の外に連れ出された。
「この後、サプライズで二人に花束を渡すことにしてるんだけど、紗英さんにはあいちゃんが渡してね」
そう言われて華やかだけどどこかゴチャゴチャした印象の花束をドサッと腕に乗せられた。
春之に花束を渡すのは、紗英さんの姪っ子で4歳になるリオちゃんだという。
リオちゃんはやはりプリンセスみたいなピンクのドレスを着ていた。
学校では小さい方の私でも、4歳の子に比べればさすがにひょろっと高い。
それなのに同じようなピンクのフリフリを着ているなんて滑稽だった。
それでも春之側の出席者で一番幼いのは私で、この役を代わってもらえそうな人はいない。
言われるまま私はゴチャゴチャの花束を持って、リオちゃんと一緒に会場に入った。
ライトと拍手に迎えられ、ホテルの人に誘導されながらまっすぐ高砂へと進む。
小さな女の子が花束を持っているだけで、会場のボルテージは上がるようだ。
もちろん、私ではなくリオちゃんの方の話。
春之と紗英さんはテーブルの前に立って私たちを迎えた。
春之はしゃがんでリオちゃんから花束を受け取る。
シャッターと拍手の音で聞こえなかったけれど、「ありがとう」と言ったのだと口の動きでわかった。
私もリオちゃんに続いて紗英さんに花束を渡した。
「あいちゃん、ありがとう!」