こい
春之は私の父のいとこの子だったか、いとこの奥さんの弟の子だったか、とにかく〈遠縁〉としか言い様のない家の一人息子だ。
それでも春之のお父さんが本家のおじさんと仲が良く、血縁以上の親しい付き合いをしていた関係で、盆正月を始めとする親戚の集まりには必ず参加していた。
私より18歳も年上の春之。
だから私の記憶にある春之は一番古いあの夜宮のときでもすでに大学生で、隣県の国立大学に進学して一人暮らしをしていた。
大人になった今ならば、大学生が親戚の集まりにマメに参加していることがどれほど珍しいのかわかる。
実際に他の家の子どもたちは葬儀や結婚式など余程大きな冠婚葬祭行事は別として、あまり本家に来ていなかった。
中学生や高校生はそれなりに忙しい。
10歳離れた私の兄も部活だなんだと参加しないことが多く、私は両親に連れられていつも一人で本家の大人に混じっていた。
そんな中だから、春之は大学生ながら〈子ども〉というポジションに置かれていたようだ。
みんなから「春之」と呼ばれてかわいがられていた。
だから自然と私も「はるゆき」と悪気なく呼び捨てするようになったのだ。