こい
その年の冬、本家のおばさんが我が家を訪ねた際に、
「あいちゃん、これ春之から預かってたの」
と、小さな無地の白い紙袋を渡された。
開けてみると、中からは青いイチゴの形をした棒飴が出てきた。
後に少し離れた市外にある飴屋さんで、希望すれば好きな形のものを作ってもらえるのだと知った。
そこで作ってもらったものだろう。
やわらかい色付きの飴を練って作るそれは、私の思い描いたものとは全然違っていた。
だけど、半年近く経って春之からもらったその飴を私は結局食べることができず、翌年の猛暑の夏に私の机の中で悲しいほど無惨に溶けてしまった。
あの飴のお礼を私はとうとう言えなかった。