こい
4 つき
これまで私はどうやって春之に会っていたんだっけ?
立ち止まってそんなことを考えてしまうくらい春之には会わなくなった。
本家に行っても相変わらずすれ違い。
中学校に上がると私の方が忙しくなって、本家に行くことも少なくなってしまったせいだ。
よく考えてみると今までだってせいぜい年に数回会う程度。
それでよくあれだけ春之でいっぱいになれたと思う。
私の人生に巧妙な罠でも仕掛けられていたみたいだ。
大きな町でもないのに偶然会うこともない。
どの辺りに住んでいるのかすら知らない。
春之の実家の連絡先はわかっても本人に直接繋がる番号は知らなかった。
例え家を知ったところでそこは紗英さんと二人の家だし、電話をかけてまで話す用事もない。
私と春之をつなぐものは、あるかどうかもわからない薄い血縁以外にはあまりにも希薄だった。
それでも確かに血縁が存在している印のように、私の家にも春之と紗英さんの結婚集合写真がある。
親戚だけしか写っていないそれに、笑顔の紗英さんと、笑っていないまでも穏やかな表情の春之と、まったく無表情の私が一緒にいる。
私が紗英さんに花束を渡している写真も残っている。
やっぱり私に笑顔はなかったけれど、「あいちゃんったらすごく緊張しちゃって」とみんな笑って許してくれた。
その点だけは子どもでよかったと思う。
誰も私が紗英さんに嫉妬しているなんて思わなかった。
それくらい私と春之は釣り合っていないのだ。