こい
高校生になっても大人から見たら私はまだまだ子どもだ。
宴会の間、たまに話は振られるものの基本的には昔からずっと変わらず蚊帳の外。
多少ビールをついで回ったり、後かたづけのお手伝いをするくらいはできるようになったけれど、それも終わってしまうとぽっかり暇になった。
そうなれば、私にできることは隣の部屋でぼんやりすることだけ。
夏の日差しはまだまだ強く、幼い頃みたいに無防備になれない私は日焼けを気にして日光の当たらない位置から窓の外を眺めていた。
地面スレスレに咲く小さな花にすら濃い影ができるほど太陽は元気だ。
それでも室内は冷房が効いていて、薄着だと少し寒い。
触れてみると腕はひんやり冷たくて、自分の手のひらのぬくもりが気持ちよかった。
脚も抱え込んで両手で自分を抱きしめるように小さくまるまっていると、建て付けがわずかに悪くなった襖のガタッという音が聞こえた。
予想していたとおり、春之だった。