こい
ひなたぼっこするようにいつも陽だまりに座る春之だったけど、やはり夏は暑いのだろう。
日差しを避けていつものように私の隣に座った。
春之は変わらない。
私が生まれてから15歳くらいは年をとったはずなのに。
実際若く見えるわけではなくちゃんと30代に見えるのに、それでも春之は変わらない。
それは新しかったフローリングが傷だらけになっても、差し込む太陽光に変化を感じないのと同じようだ。
だけど傷だらけの私は、昔と同じように無邪気な目を春之に向けることはできなくなっていた。
チラッと向けた視線の先には春之の大きな手が見えて、その指にはシンプルなかまぼこ型の結婚指輪がされている。
結婚式でピカピカ光っていたそれは細かい傷で輝きをやわらかくしており、春之の手にしっくりと馴染んでいる。
月に祈っても、何を望むこともできない相手だ。
恋心に気付いた小学生のときには漠然とした絶望だったものが、高校生にもなればはっきりとわかる。
だからといって、自分の気持ちの処理の仕方がわかるようにはなっていない。
もっと大人になれば、それも自在にコントロールできるのだろうか。
私が子どもだから、ずっと子どもだったから、すべてがうまくいかないような気がしている。