こい
二人しかいないから若村君が言ったように、掃いてゴミを捨てるだけにした。
教室よりも狭い視聴覚室。
だけど単純に人数が少ないからいつもより時間はかかった。
「じゃあ、俺ゴミ捨ててくるから。藤嶋さんは帰っていいよ」
スタスタと出ていく若村君を見送って、私はぼんやりと手近なイスに座った。
帰っていいと言われたけど、なんとなく帰らない方がいいと思ったのだ。
若村君が戻ってきたら解散するだけだし先生のチェックもないのだから、待つ意味なんてないのだけど。
見るともなしに見た窓の外はどよんと濁った青空。
空梅雨なのか雨の日は少ないのに、ダラダラと梅雨明けせずにいる。
毎日どこかジメジメとして制服の中が気持ち悪い。
止まっているように見えるよどんだ色の雲をじーっと見ていると、それでもわずかに変化している。
こんなにゆっくりとした変化でも、この雲を明日見ることはないのだな。
ガタッ。
入り口で音がして、妙な感傷から引き戻された。
「・・・帰ってなかったの」
「うん。なんとなくね。若村君が戻ってきたら帰ろうと思ってた」
そう答えて立つと、私と出入り口の間に若村君が立ちふさがった。