こい

真っ正面から向き合って明らかに進路を邪魔する若村君に違和感を覚える。

「どうしたの?」

若村君はこわばった表情で、ひとつ深呼吸をした。

「俺と付き合ってください」

予想だにしていなかったから、とてもびっくりしてしまった。

「付き合うって・・・その、あの『付き合う』ってこと?」

変な文章だったのに若村君はちゃんと理解してくれた。

「そう。もしゴミ捨てから戻ってまだ帰ってなかったら言おうと思ってた」

真っ直ぐに目を見て告白したのに、言い終わると恥ずかしそうに目を逸らしてしまう。
そんな仕草が少し意外で、とてもかわいらしい。

ドキドキして素直に嬉しいと思った。
こんな風に告白されたのも初めてで、それだけで舞い上がってしまいそう。

だけど、

「少し考えてもいいかな?」

若村君のことは好きだと思うけど、それがどんな『好き』なのかわからない。
数分前まで『付き合う』なんて微塵も考えたことがないのだ。
今の今では、自分の気持ちも整理できない。

「わかった」


こんな状況で一緒に教室に戻るのは気恥ずかしくて、私は一人早歩きで廊下を急いだ。


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