こい
「付き合いたい」と伝えると若村君は見たことないほど嬉しそうに笑った。
そんなに喜ばれると私も嬉しくなり、同時に心の片隅が少し冷たくなった。
「若村君、時間を大事に使ってるのに私と付き合うなんて無駄じゃないの?」
「付き合う」なんて初めてだから曖昧にしかわからないけど、私と一緒にいる時間が増えるはずだ。
若村君ならばその時間を勉強や趣味に充てた方が有効だと思う。
しかし若村君はとても不満そうに目を細めた。
「好きな子と一緒にいることがどうして『無駄』なの?」
「あ」
改めて『好きな子』と言われて、わかっていたはずなのにドキッとした。
そうだよね。
若村君は私のことが好きなんだ。
それは「一緒にいたい」につながる気持ちだ。
「ありがとう」
赤くなった顔を見られたくなくて俯きながらそう伝えた。
若村君の反応が気になって少し目線を上げると、私に負けないくらい赤い顔をして私と同じように横を向いていた。
そんな時間がくすぐったくていとおしくて、私はとても幸せだと思っていた。